業務委託の契約解除はいつでもできる?

民法上では、業務委託の契約解除は、基本的に発注側がいつでもできます。ただし、業務委託の契約の種類によっては違約金が発生するリスクがあります。
請負契約では、フリーランスの仕事が完成していない場合に契約を解除する場合は、フリーランスに対して損害賠償をすれば、いつでも契約解除できると民法第641条で定められています。
請負契約は、成果物を完成・納品することで報酬が発生する契約形態のため、フリーランスが一方的に不利益を被らないよう配慮されています。
一方で、委任・準委任契約では、民法第651条によって、発注側・フリーランス側双方がいつでも契約解除できるとされています。
ただし、請負契約と委任・準委任契約いずれも、フリーランスとの契約期間が6ヶ月を超える場合は注意が必要です。
2024年11月に施行されたフリーランス新法では、発注者側が一方的に契約解除することを厳格に禁止しています。
詳しくは後述しますが、契約解除する際には、発注側は契約終了日から十分な猶予をもってフリーランスに契約解除の意向を通知する義務があります。
なお、フリーランス側に重大な過失がある場合は、上記の猶予を待たずに契約解除が認められることもありますが、基本的には双方の合意や適切な手続きが必要です。
業務委託の契約解除には通知や理由に要注意

業務委託の契約解除を進める際に、通知のタイミングや契約解除の理由が不適切だと、トラブルが発生するリスクが高まります。
フリーランスとのトラブルは、時に企業の信頼にも大きく影響するため、適切な手順を理解し、リスクを避けることが非常に重要です。
この段落では、具体的な通知の期限や理由の設定方法を詳しく解説します。
契約解除を伝えるタイミング
業務委託の契約解除の通知は、フリーランスとの契約期間や、締結している業務委託契約書の内容によって異なります。
6ヶ月以上継続してフリーランスに業務を発注している場合は、契約終了日の最低30日前までに通知しなければならないとフリーランス新法で定められています。
フリーランスが次の案件を探したり、現在の業務の整理をしたりするために、30日以上の期間が必要とされているためです。
なお、もし業務委託契約書に記載されている期間が「契約終了日の2ヶ月前まで」などと、フリーランス新法で定められている期間より長い場合は、業務委託契約書のルールに従う必要があります。
記載がない場合でも、30日という目安を守ることでトラブルを回避しやすくなります。
契約解除には正当な理由が必要
フリーランス新法により、フリーランスから契約解除の理由を尋ねられた場合、発注側は契約終了日までに開示する義務があります。
契約解除の理由が曖昧だと、フリーランスからの信頼が損なわれ、トラブルに発展する可能性があるため、業務委託の契約解除には、正当な理由が必要です。
契約解除の理由が、フリーランス側にある場合と、発注側(企業)の事情による場合では、それぞれの理由を明確にし、具体的かつ公平な説明を心がけましょう。
フリーランス側に責任がある理由としては、納期を守らない、成果物の質が低い、業務態度に問題があるなどが挙げられます。
理由を正当化するためには、過去のやり取りや指摘の記録を保存しておくことが重要です。
一方で、発注側の事情による理由としては、業績の悪化や予算の減少、プロジェクトの終了などが挙げられます。ただし、この場合も、フリーランスにとっては突然の収入減少となるため、真摯に説明することが求められます。
業務委託の契約解除の際に生じ得るリスク

業務委託の契約解除をする際は、発注側の企業に多くのリスクが伴います。
違約金や損害賠償、新しい委託先探しのコストなど、あらかじめ知っておくべき点を確認しましょう。
新しい人材や委託先を探すコストが発生する
プロジェクトの終了など、発注側の事情によって契約解除する場合を除き、基本的に発注側は、業務委託の契約解除後に新しい人材や委託先を探す必要があります。
例えば、新しいフリーランスを探すためには、求人の作成や掲載、選考、条件交渉など、経済的な負担はもちろん、時間的なコストもかかります。
また、新しいフリーランスと契約できた場合も、業務内容を説明したり、業務を引き継いだりする必要があるため、社内スタッフの負担も増加します。
損害賠償金や違約金が発生する
契約解除が契約違反とみなされた場合は、フリーランスから違約金や損害賠償金を請求されるリスクがあります。
なお、違約金は契約に違反した側が支払うため、損害の発生有無にかかわらず発生する場合もあります。一方で、損害賠償金は、実際に発生した損害を補填するものです。
企業イメージが悪化する
一方的に契約解除を通告したり、不誠実な態度をとったりすると、フリーランスからネガティブなイメージを抱かれるかもしれません。
場合によっては、口コミやSNSなどで発信・拡散される可能性もあります。
企業イメージが大きく損なわれることになり、ほかの取引先や新規のフリーランスとの交渉に悪影響を及ぼします。
訴訟を起こされる
フリーランスが契約解除を不当だと感じ、契約解除の合意が得られない場合は、訴訟を起こされる可能性があります。
例えば、フリーランスが「契約内容に違反して解除された」と主張した場合や、契約解除に関する条項が不明確な場合などが挙げられます。
訴訟は時間や費用がかかるだけでなく、企業イメージにも影響を与えます。
業務委託の契約解除の手順

フリーランスとの業務委託契約を解除する際は、正しい手順をしっかりと踏むことで、上記のリスクを防ぎ、双方が納得する形で契約を終了させることができます。
この段落では、業務委託の契約解除の具体的な手順を解説します。
契約内容を確認する
業務委託契約書には、解除に関する条件や通知期間、違約金に関する記載がある場合があります。
例えば、相手に契約解除を通知する期間が「30日前まで」「2ヶ月前まで」などと明記されている場合は、その期間を守る必要があります。
業務委託契約書には法的効力があるため、契約内容に合わせてしっかり対応しましょう。
契約履行を催告する
契約解除を検討する際は、フリーランスに通告する前に契約内容の履行を求める必要があります。「履行を求める」とは、平たくいうと「契約通り進めるよう依頼する」ことです。
例えば、納品が遅延している場合は、早期に納品するよう通知する催告書を発行し、具体的な履行期限を設定します。
催告書には以下の内容を含めるとよいでしょう。
- 違反内容:契約違反が発生している状況
例)納品予定日を過ぎても納品が行われていない - 履行期限・具体的な期限
例)通知日から10営業日以内に納品を行うこと - 履行がない場合の対応:期限内に履行されない場合、契約解除を進める
催告書に上記のポイントを記載することで、フリーランスが業務を行う可能性があります。
契約終了日の最低30日前までにフリーランスに契約解除を通知する
契約解除を進める際は、少なくとも30日前までに通知しましょう。30日を下回った通知は、フリーランス新法違反となります。
以下の内容を盛り込み、書面やメール、チャットツール、FAXなどで通知しましょう。
- 契約解除の意向
- 契約終了日
- 契約解除の理由(簡潔かつ事実に基づいた説明)
契約解除は、フリーランスの収入減につながり、精神的負担にもなることから、真摯な態度が求められます。
【企業側の事情によって契約解除する場合のメール例文】
| 件名:業務委託契約終了のご連絡 〇〇様 お世話になっております。 株式会社〇〇の〇〇です。 突然のご連絡で大変恐れ入りますが、この度は、〇〇の案件に関する業務委託契約を〇月〇日をもって終了させていただくこととなり、その旨をご連絡申し上げます。 これまでのプロジェクトにおいて、〇〇様には多大なお力添えを賜り、心より感謝しております。 この度の契約終了は、〇〇(事業方針の変更、予算見直しなど)によるものであり、〇〇 様のパフォーマンスとは一切関係ございません。 このような形でのご連絡となってしまい誠に恐縮ではございますが、何卒ご理解いただけますと幸いです。 契約終了に伴い、以下の点についてご確認をお願いいたします。 ・契約終了日:〇年〇月〇日 ・最終納品物の提出期限:(該当する場合は具体的に記載) ・精算関連:(未払い金がある場合の支払いスケジュールなど) ご質問やご相談がありましたら、いつでも遠慮なくご連絡ください。 これまでのお力添えに改めて感謝申し上げるとともに、今後のご活躍を心よりお祈り申し上げます。 何卒よろしくお願いいたします。 |
【フリーランス側の問題によって契約解除する場合のメール例文】
| 件名:業務委託契約終了のご連絡 〇〇様 お世話になっております。 株式会社〇〇の〇〇です。 この度は、〇〇に関する業務委託契約につきまして、〇月〇日をもって終了させていただきたくご連絡申し上げました。 契約解除の背景といたしましては、〇〇(具体的なスキルや基準)において、当社の期待を満たす水準に至らなかったことが理由となります。 しかし、〇〇様のご努力や熱意に対して感謝の気持ちは変わりません。 これまでご尽力を賜りまして誠にありがとうございました。 つきましては、契約終了に伴い、以下の点についてご確認をお願いいたします。 ・契約終了日:〇年〇月〇日 ・最終的な納品物の提出期限:〇〇(必要に応じて具体的に記載) ・精算関連:(未払い金がある場合の支払いスケジュールなど) 改めまして、これまで〇〇様に協力いただいたことに改めて感謝を申し上げます。 また、今後のご活動がより良いものとなるよう心よりお祈り申し上げます。 本件について何かご不明点やご相談がありましたら、お気軽にご連絡ください。 何卒よろしくお願いいたします。 |
契約解除に合意が取れた場合は「契約解除合意書」を作成する
契約解除合意書は、当事者双方が契約解除に同意したことを記録する書類です。一方的な通知ではなく、合意書を作成することでトラブルを未然に防ぐ効果があります。
解除合意書には以下の内容を記載しましょう。
- 契約解除の同意内容
- 契約終了日
- 未払い報酬や費用精算の取り決め
【契約解除合意書の文面案】

契約解除に合意が取れない場合は「契約解除通知書」を作成する
契約解除にフリーランスから合意が得られない場合は、契約解除通知書を作成し、契約解除の意思を伝える必要があります。
契約解除通知書は、フリーランスに届いた時点で契約解除の法的効力を持ちます。
契約解除通知書には以下の内容を含めましょう。
- 契約解除の理由
- 契約終了日
- 必要に応じた違約金や損害賠償の取り決め
解除通知書を郵送する際は、内容証明郵便を利用するなど、証拠を残す方法を選ぶとよいでしょう。
【契約解除通知書の文面案】

違約金・損害賠償・未払い報酬などを取り決める
業務委託の契約解除に伴い、違約金や損害賠償が発生する場合は、契約書に基づいて条件を整理し、フリーランスに説明する必要があります。
未払い報酬がある場合も、報酬の算出方法や支払いスケジュールを明確にし、透明性を意識した対応を心がけましょう。
アカウントやアクセス権を整理する
業務委託の契約解除が無事完了した後は、フリーランスが業務の機密情報にアクセスできないよう、速やかにアカウントやアクセス権の削除を行います。
業務が終了した後も、不適切に情報へのアクセスが可能な状態が続くと、情報漏洩や不正使用のリスクが高まります。
フリーランスにデータなどを渡している場合は、データの削除や返却を求めて、情報漏洩リスクを回避しましょう。
契約解除のトラブルを回避するために業務委託契約書に盛り込むべき条項

業務委託の契約解除は、報酬の未払いや違約金・損害賠償請求、信用問題への影響などのさまざまなリスクがあり、場合によっては法的な問題に発展することもあります。
トラブルを防ぐためには、業務委託契約書に具体的で明確な条項を盛り込むことが重要です。
特に、契約解除の条件や手続き、報酬や費用の精算方法、違約金や損害賠償に関する規定を設けることで、トラブルのリスクを抑え、スムーズに契約解除を目指すことができます。
この段落では、それぞれの条項について詳しく解説します。
契約解除に関する条項
契約解除に関する条項とは、業務委託契約を途中で終了する場合に適用される条件や手続きを明記した内容です。
契約解除に関する条項を設けることで、認識の違いが生じにくくなるため、契約解除に伴うトラブルを未然に防ぎ、スムーズに手続きを進めることができます。
具体的な項目としては以下が挙げられます。
解除可能な条件
・契約解除が可能となる条件を記載する
・不測の事態が発生した際の対応がスムーズになる
例)
・契約の不履行(納期遅延、成果物の質が契約内容を満たさない場合など)
・契約相手の業務停止や破産
通知期間
・契約解除を通知する際の期間を記載する
・重大な契約違反がある場合には、即時解除が可能な例外を設定しておくとよい
例)
・解除を希望する場合は30日前までに書面で通知する
・特定の重大な契約違反が発生した場合は即時解除できる
解除方法
・契約解除の通知方法を記載する
・書面、メールなど通知する際の形式を指定し、通知する際は、解除理由・契約終了日・精算内容などを盛り込むよう義務付ける
例)
・契約解除を通知する際に使用する形式を指定する
・通知の際は、解除理由、契約終了日、未払い金の精算方法を明記する
未払い報酬や費用の精算方法に関する条項
契約解除後にフリーランスとトラブルになりやすいのが、未払い報酬や費用の精算に関する問題です。
業務委託契約書で、報酬の算出方法や報酬の支払いスケジュールを具体的に設定しておくことで、トラブルを防げます。
報酬の算出方法は、契約解除までに発生した報酬をどのように計算するかを事前に取り決めましょう。例えば、作業量に基づいて日割り計算を行う、納品物の完成度に応じた報酬を支払うといった方法があります。
報酬の支払い日は、「契約解除日から10日以内に銀行振込で支払う」といった具体的な期限と方法を示しておくことで、スムーズな精算が可能になります。
違約金に関する条項
違約金に関する条項では、違約金の発生条件や金額の計算方法、支払い期限を定めます。
違約金の発生条件では、どのような場合に違約金が発生するのかを具体的に記載します。
【企業側に理由があるケースの例】
- フリーランスが案件の着手途中で契約を解除する場合
- 契約終了日からさかのぼって〇日以内に契約解除を通知した場合
【フリーランス側に理由があるケースの例】
- 無断で納期を1週間以上過ぎた場合
- 業務内容が契約基準を著しく下回った場合
違約金の計算方法や金額は、具体的な基準を示しましょう。
【固定金額を設定する場合】
- 違約金として一律〇〇円を支払うものとする
【契約総額に基づいて算出する場合】
- 本契約の違反に伴う違約金は、契約総額の10%を基準として算出するものとする
- ただし、違約金の上限は〇〇円とする
【未払い金額に基づいて算出する場合】
- 未払いの報酬に基づき、違約金として未払い金額の25%を加えた金額を支払う義務を負うものとする
支払い期限の条項では、違約金の支払い期限を正確に記載しましょう。具体的には、「違約金の支払いは契約解除日から30日以内」などと定めます。
損害賠償に関する条項
損害賠償の対象範囲や上限金額を設定することで、万が一のトラブルに過剰な負担を負わずに済みます。
損害賠償の範囲では、相手に損害を与えた場合に、どこまでの責任を負うのかを明確にします。
また、損害賠償額が無制限になって莫大な損害賠償請求とならないよう、上限を設けておくことも重要です。「契約総額の〇倍を超えない範囲」といった形で記載しましょう。
スムーズに業務委託の契約解除を進めるポイント

業務委託の契約解除は、慎重に対応しなければトラブルに発展するリスクがあります。特に、解除理由や手続きに不備がある場合は、フリーランスの不信感を招く可能性が高まります。
しかし、適切な手順と配慮を心がけることで、双方が納得した形で契約解除を進められます。この段落では、スムーズに契約を終了させるための具体的なポイントを解説します。
契約解除日までの日数に余裕をもって通知する
契約解除の通知はできる限り早めに行うことが大切です。
契約解除を通知するタイミングが遅れると、フリーランスの業務スケジュールや収入に大きな影響を与えるため、不満や不信感が生じやすくなります。
業務の内容や契約期間にもよりますが、契約解除の通知は、契約終了の1~2ヶ月前までには行いましょう。
特に6ヶ月以上の長期契約の場合は、フリーランス新法で通知期限が厳格化されているため、通知するタイミングを守る必要があります。
契約解除を通知する手段は、証跡が残るよう書面やメール、FAXなどを使用しましょう。
口頭で説明した場合でも、追って書面やメールを送り、合意したポイントを確認してもらうのもおすすめです。
業務や交渉に関する記録を残す
業務委託の契約解除を円満に進めるためには、これまでの業務や交渉履歴を明確に記録しておくことが重要です。
特に、スキル不足や納品遅延などのように、解除理由がフリーランスの業務遂行にある場合は、記録があることで説明の際に説得力が増します。
トラブルになりそうな場合は弁護士に相談する
契約解除の過程で、トラブルに発展するリスクが高いと判断した場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。
弁護士などの専門家に相談するタイミングとしては、以下が挙げられます。
- フリーランスが契約内容を履行しないことで業務に大きな影響が生じる場合
- フリーランスが解除理由を受け入れない場合
- 高額な損害賠償請求を受ける可能性がある場合
弁護士は、法律に則って解除手続きを進めるアドバイスをしてくれます。
必要に応じて契約解除通知書や契約解除合意書の作成依頼もできるので、発注側の負担を減らしつつ、スムーズに契約解除が行えるでしょう。
まとめ
業務委託の契約解除する際は、明確な手順と配慮ある対応がトラブルを防ぐポイントとなります。
フリーランスと契約する際には、業務委託契約書の解除条件や通知期間などをしっかり盛り込むことで、トラブルを未然に防げます。
実際に契約解除を進める際には、改めて解除の理由が正当か、契約解除の通知するタイミングは適切かなどを確認しましょう。
確認せずに解除を進めると、フリーランスに不信感を抱かれたり、トラブルとなったりするリスクがあります。
契約解除はネガティブなイメージを持たれがちですが、発注側が丁寧な対応と適切な準備を行うことで、企業としての信頼を守ることができるでしょう。
また、契約解除によって関係性がなくなったとしても、将来的にまた仕事を一緒にする可能性もゼロではありません。
発注側もフリーランス側も気持ちよく契約終了に持ち込めるように、信頼関係を保つことを意識して対応しましょう。
