公開日:2025.01.31 最終更新日:2026.03.03

業務委託でも残業代の支給は必要?発生条件やトラブルを回避するポイントを解説

「業務委託で人材を雇う場合、残業代は発生するのか?」と疑問を抱えている企業担当者の方もいるでしょう。結論を伝えると、業務委託の場合は、原則残業代は発生しません。

しかし、業務委託契約を結んでいながら、「労働者性が高い」と判断されると残業代が発生したり、違法と判断されたりするリスクがあるので注意が必要です。

この記事では、業務委託での残業代の発生条件を解説します。法律を守りながら、適切に事業を運営していくために、ぜひ参考にしてください。

業務委託とは?

「アウトソーシング」と書かれた画像

業務委託とは、特定の業務をフリーランスや法人などの外部の事業者に委託することです。契約内容に応じて、「請負契約」「委任契約」「準委任契約」のいずれかの契約を結びます。

目的業務内容例
請負契約成果物の完成システム開発
Webサイト制作
委任契約法律行為を対象とした業務の遂行確定申告の代行
弁護業務
準委任契約士業以外の業務の遂行SNSの運用代行
コンサルティング

成果物の納品を目的とする場合は請負契約、業務の遂行を目的とする場合は委任・準委任契約を結ぶことが一般的です。

雇用契約との違い

雇用契約とは、企業が従業員を直接雇用し、労働力を提供してもらう契約です。業務委託は、成果や業務遂行に対して報酬を支払うのに対し、雇用契約は従業員として指示に基づき労働した対価として給与を支払います。

また、雇用契約は従業員を雇う契約であるため、企業は業務に対する指示を出す権利を持ち、厚生年金や健康保険といった社会保険料の一部を負担する義務があります。

一方で、業務委託は従業員としての雇用ではないため、受託者の業務プロセスに対して具体的な指示を出したり、勤務時間や場所を指定したりすることは、原則として認められていません。また、社会保険料は受託者が全額負担します。

業務委託でも「労働者」に該当する場合は残業代の支給が必要

「必要」と書かれ画像

業務委託契約は、雇用契約に該当しないため、基本的に労働基準法の適用外となります。しかし、労働者性が高いと判断された場合は、労働基準法が適用され、雇用契約と同様に残業代の支給が必要となるケースがあります。

業務委託契約でも「労働者」とみなされる可能性があるため、企業は条件を正確に把握し、適切に対応することが不可欠です。

労働者とは?

「労働者」とは、雇用契約を結び、企業の従業員として雇われて、労働に対する対価を支払われる人を指します。

労働基準法において、次の2つの基準に当てはまる人が労働者に該当します。

  • 労働が他人の指揮監督下において行われている、すなわち、他人に従属して労務を提供している
  • 報酬が、「指揮監督下における労働」の対価として支払われている

▼引用:雇用・労働労働基準法における「労働者」とは|厚生労働省

上記の定義に該当する場合は、労働基準法が適用され、残業代や最低賃金などの規定が守られる対象となります。次に、労働者に該当する基準を見ていきましょう。

労働者に該当する基準

契約内容に問わず、「労働者」と認められる判断基準は大きく分けて次の8つのポイントがあります。フリーランスなどの受託者に対して、企業はどのような行為をしたら労働者に該当するのかを確認してください。

労働者に該当する基準該当する企業の行為
仕事の依頼・業務内容に対する諾否の自由受託者に仕事を断る権利を与えない
指揮監督の有無仕事量の配分や進め方に対して、具体的な指示を出す
拘束性就業場所や就業時間を指示する
代替性正当な理由によって業務の遂行が難しくなった場合も、代役を立てることを認めない
報酬の労務対償性報酬を日給や時給で決める
資機材などの負担業務で使用する材料や機械・器具などを用意・貸与する
報酬額自社の従業員と同程度、もしくは経費負担を差し引くと同程度よりも低い報酬額を設定する
専属性他の企業との仕事を制限・禁止する

労働者に該当するかどうかは、契約書の記載内容だけでなく、実態としてどのように働いているかによって判断されます。上記の表に示した基準のいずれかに該当する場合は、業務委託契約であっても労働者性が認められる可能性があります。

なかでも、「指揮監督の有無」や「拘束性」は、労働者が企業に従属しているかを直接示す基準として、特に判断しやすいポイントです。これらの基準は、企業の法律を守りながら、事業を進めているかを判断する材料としても重視されます。

業務委託で残業代が発生する条件

付箋に「条件」と書かれが画像

契約上は業務委託であっても、実態として雇用契約であると判断された場合は、労働基準法が適用されるため、残業代の支払いが必要になる可能性があります。

大前提として、業務委託契約では本来、これからお伝えする4つの条件に該当するような働き方をさせてはならない点に注意が必要です。これらを守らずに、労働者性が高いと認められた場合は、企業に罰則が科されるリスクが生じます。

リスク回避のためにも適切な契約内容を設定できるように、業務委託において残業代が発生する4つの条件を確認していきましょう。

所定労働時間を超えて労働が発生したとき

業務委託契約であっても、所定労働時間を超えた労働が発生した場合には、残業代の支払い義務が発生する可能性があります。

所定労働時間とは、契約書や就業ルールによって取り決めた労働時間です。例えば、1日8時間勤務の業務委託契約が締結されている場合に、実働10時間働いた場合などが該当します。

法定労働時間を超えて労働が発生したとき

法定労働時間を超える労働が発生した場合は、業務委託契約であっても、労働基準法の割増賃金規定が適用される可能性があることを覚えておきましょう。

法定労働時間とは、1日8時間、また1週間40時間の労働時間を指します。割増賃金の割増率は、原則25%です。

休日労働が発生したとき

業務委託契約内で定めた休日に労働が発生すると、割増賃金の支払いが必要となる場合があります。

労働基準法では、次のいずれかの休日を与えることが義務付けられています。

  • 毎週1日の休日
  • 4週間を通じて4日以上の休日

▼参考:労働時間・休日 |厚生労働省

例えば、月曜日から土曜日の勤務契約において、日曜日に稼働した場合が該当します。休日労働の割増賃金率は、原則35%です。

深夜労働が発生したとき

深夜労働とは、午後10時から午前5時までの時間帯に行われる労働を指します。深夜の時間帯の労働には、割増賃金25%が適用されます。

例えば、納期が迫り、深夜に業務対応をしてもらったり、深夜のオンラインミーティングに参加してもらったりした場合などが該当します。

業務委託での残業代リスクを回避する方法

ドミノの画像

業務委託契約において、残業代が発生する条件に該当すると、実質「雇用契約」であると判断される「偽装フリーランス」として指摘されるリスクが非常に高くなります。

偽装フリーランスと判断されると、罰金を科されたり、企業のイメージダウンにつながったりする恐れがあるので注意が必要です。最後に、業務委託契約における残業代の支払いや違法行為を回避する方法を解説します。

業務委託契約と雇用契約の違いを理解して適切な契約を結ぶ

まずは、人材を募集する前に、業務委託契約と雇用契約の違いを理解しましょう。業務委託契約と雇用契約は、仕事における目的や、業務を進める際に企業が携われる範囲が異なります。

目的指揮命令権
業務委託契約成果物の納品
指定した業務の遂行
なし
雇用契約労働力の提供あり

業務委託は、成果物の納品や指定した業務を遂行してもらうなど、業務の一部を委託することが目的です。業務の目的や職種に合わせて、請負契約などの該当する契約を結びます。

また、企業に指揮命令権がないため、受託者の業務の進め方に対して細かく指示を出したり、勤務場所を指定したりすることはできません。

一方、雇用契約は、自社の従業員として業務に従事してもらうことを目的としています。そのため、企業に指揮命令権があり、業務内容や勤務場所の指示を出せます。

これらのルールを理解した上で、どちらの契約が自社にとって最適な契約か考えて、人材の募集を進めましょう。

顧問弁護士・税理士に相談する

業務委託をはじめ、人材を募集する際に不安な点がある場合は、顧問弁護士や税理士に相談するようにしましょう。弁護士や税理士に相談できる内容は次の通りです。

  • 弁護士:契約書の適法性やリスク管理の助言
  • 税理士:報酬や税金に関するアドバイス

例えば、顧問弁護士の助言を求めることで、労働者性が疑われる契約や働き方を修正・改善できるケースも多いでしょう。違反してからでは遅いので、専門家の手を借りて、クリーンな状態で事業を進められる体制を整えましょう。

まとめ

業務委託は、労働基準法の対象外となる契約のため、原則残業代の支払いは発生しません。ただし、次の条件に当てはまると、業務委託契約でも残業代の支払いが発生するリスクがあります。

  • 受託者(フリーランス)が実質企業の従業員のように働いており「労働者性」が高い
  • 所定労働時間外の労働・法定労働時間外の労働・休日労働・深夜労働が発生した場合

これらの条件に当てはまる場合、業務委託ではなく、企業の従業員のように働かせていることから「偽装フリーランス」と呼ばれる違法行為と判断される可能性が高まります。

違法行為をしてしまうリスクを回避するためには、契約形態の特徴を理解したうえで人材を募集すること、弁護士・税理士に相談することが大切です。

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笹まい

この記事を書いた人

笹まい

フリーランスライター

専門商社などで営業職・営業アシスタントの経験を積んだ後、副業からライター活動をスタート。現在はフリーランスライターとして活動中です。私自身働き方に悩んだ経験を活かして、読者のみなさまにとってベストな働き方を見つけるヒントになるような記事をお届けします。

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