リスキリングとは?

リスキリングとは、従業員がこれまで培ってきた経験や知識を土台にしながら、今後の事業や業務で求められる新しいスキルを身につけ、役割そのものをアップデートしていく取り組みです。単発の研修や資格取得を目的としたスキルアップとは異なり、事業環境の変化を前提に、職務や人材ポートフォリオを再設計するための学び直しである点が特徴です。
近年、多くの企業がDX推進やAI活用、業務プロセス改革に取り組む中で、従来の職種定義やスキルセットだけでは対応しきれない場面が増えています。新たな技術やツールを導入しても、それを使いこなし、業務や価値創出につなげられる人材がいなければ、十分な成果は期待できません。こうした背景から、外部採用に頼るだけでなく、既存社員を新しい領域で活躍できる人材へと転換するリスキリングが、現実的かつ持続可能な選択肢として注目されています。
人事・採用担当者にとって重要なのは、リスキリングを単なる教育施策として捉えないことです。事業戦略と連動させ、将来どのようなスキルが必要になるのかを見極めたうえで、職種ごとに求める能力を定義し、学習後の配置やキャリアパスまで一貫して設計する必要があります。
リスキリングが注目・導入されている背景

企業におけるリスキリングは、一時的な人材育成トレンドではなく、事業継続や成長戦略と直結する取り組みとして位置づけられつつあります。まずは、リスキリングが注目されるようになった背景を解説します。
DX・AI化による業務構造の変化
AIやデータ分析、クラウドの普及により、従来の業務プロセスや職務内容は大きく見直されています。定型業務が自動化される一方で、デジタル技術を活用して価値を生み出す役割が新たに求められるようになりました。
その結果、既存社員に新しい技術や知識を習得させ、役割転換を図るリスキリングが重要性を増しています。
人材不足の深刻化と生産年齢人口の減少
少子高齢化の影響で生産年齢人口が減少し、新規採用だけで必要な人材を確保することが難しくなっています。特にデジタル人材や専門職は採用競争が激しく、外部調達には高いコストと時間がかかります。
こうした状況から、既存社員を再教育して戦力化するリスキリングが、現実的な人材確保策として注目されています。
競争力強化と事業変革のスピードへの対応
市場変化が加速する中で、新規事業の立ち上げやビジネスモデル転換は多くの企業にとって不可欠になっています。必要な人材を都度採用する方法では、変化のスピードに対応しきれないケースも少なくありません。
リスキリングを通じて既存社員が新しい役割を担えるようになることで、組織の柔軟性が高まり、競争力の維持・強化につながります。
政府の支援強化とキャリア自律の重視
人材開発支援助成金や教育訓練給付制度など、国による支援策の拡充により、企業はリスキリングに取り組みやすくなっています。コスト面の後押しがあることで、計画的な人材育成を検討する企業も増えています。
加えて、ジョブ型雇用の広がりにより、社員自身のキャリア形成や市場価値向上を支援する観点からも、リスキリングの重要性が高まっています。
リスキリングを導入している企業の事例9選

ここからは、実際にリスキリングを導入している企業の事例を、導入背景や成果と共に紹介します。
西川コミュニケーションズ株式会社
<リスキリングが必要だった理由・導入背景>
西川コミュニケーションズ株式会社では、印刷やWeb制作、データ分析といった事業を展開しているものの、事業環境のデジタル化が急速に進む中で既存のスキルセットだけでは対応が難しくなっていました。この変化に対応し、会社の競争力を維持・強化するためには、従業員がデジタル技術や新しい知識を身につけることが不可欠であるとの認識がありました。
特に、デジタルリテラシーやAI活用などのスキル習得が将来的な事業成長に直結すると判断したことが、リスキリング導入の背景にあります。社内でも「事業存続には社員の学び直しが必須」という経営層の強いメッセージが発信され、学習の機運が高まりました。
<どのようなリスキリングを実施したのか>
同社では、制作部を中心にリスキリングを体系的に推進しています。
まず、資格取得支援制度を整備し、全社員に対してITパスポートやウェブデザイン技能検定の取得を推奨、希望者にはG検定やE資格など専門性の高い資格取得も会社が支援しています。さらに、制作部では業務時間の20%をリスキリングに充て、4つのテーマ別チーム(プログラミング、動画制作、WEBマーケティング、ブランドプロモーション等)を編成して、学習と実務を並行して進めています。これらのチームはメンバー主導で学習テーマを決め、社内での実践やアウトプットを含めたプロジェクト形式でスキルを高めています。
<その結果どのような成果が得られたのか>
リスキリングの取り組みにより、従来の印刷や制作業務だけでなく、3DCGや動画制作、デジタルマーケティング、AI活用などの新たな領域に対するスキルが社内で醸成されつつあります。中には、社内で獲得したスキルを活かし、3DCGを活用した部門立ち上げや実務案件への応用につなげているケースも確認されています。
また、社内で系統立てた学習機会を設けたことで、従業員自身の学びに対する姿勢が強化され、社内全体としてデジタル化への適応力が高まっています。
▼参考:経済産業省 中小企業庁 ミラサポPlus
株式会社小坂工務店
<リスキリングが必要だった理由・導入背景>
株式会社小坂工務店は、青森県三沢市を拠点に総合建設業を展開しており、少子高齢化や働き方改革の進展などの社会課題を受け、建設業界全体で人手不足や技能伝承の課題に直面しています。
その中で、業務のデジタル化やDX推進を通じて業務効率化・働き方の柔軟性向上を図る必要があると認識されています。社内では、工事データのデジタル化やBIM(建築情報モデル)の導入、プロジェクト管理のデジタル化を進める方針が示されており、こうした変革の担い手として社員のスキル強化・再教育(学び直し)が不可欠であるとリスキリングが導入されました。
<どのようなリスキリングを実施したのか>
同社では、工事書類の電子化やプロジェクト管理システムの導入を推進し、デジタルツールを使いこなせる技能の習得を促しています。加えて、設計や施工の高度化に向けて、BIM(Building Information Modeling)を用いたモデリング技術の習得支援と、BIMエンジニア育成が明示されています。さらに、コミュニケーションシステムやクラウド型勤怠管理などの社内デジタルツールの活用により、ITリテラシーの底上げや業務効率化に資するスキルの獲得を進めています。
これらは単なる技術研修ではなく、現場や管理部門の実務に直結したスキルとして設計されている点が特徴です。
<その結果どのような成果が得られたのか>
取り組みの結果、現場と事務処理の効率化が進むとともに、データに基づくプロジェクト管理が可能になりつつあります。工期遅延の未然防止や無駄な作業削減など、工程管理の精度向上が見込まれており、結果として顧客への提供価値の強化につながっています。
加えて、BIMモデリングのスキル獲得は、設計提案力の強化やデータ活用の幅を広げ、新しい発注形態や協力会社との連携にも柔軟に対応できる体制づくりに資する成果が期待されています。
▼参考:経済産業省 中小企業庁 ミラサポPlus
▼参考:株式会社小坂工務店 DXの取り組み
有限会社たかえん
<リスキリングが必要だった理由・導入背景>
有限会社たかえんは、秋田県横手市でデリカフェ・惣菜や焼菓子の製造販売を手がける小規模企業です。時代の変化に伴い、衣料小売業から飲食・製造業へと業態転換を進める過程で、従来の業務経験だけでは対応できない新しい役割や業務が生まれました。
こうした事業転換・業務内容の拡大には社員のスキルや業務適応力の再構築が不可欠であり、従業員一人ひとりと向き合いながら学習機会を提供する必要がありました。特に、新事業部門への配置転換や正社員登用にあたっては、従来のスキルだけでは役割を果たしきれない課題があり、キャリア形成・リスキリングの取り組みが組織の持続的成長につながると考えられました。
<どのようなリスキリングを実施したのか>
まず同社では、経営者が従業員と相談しながら「学びにつながる経営指針」を策定し、従業員の興味・関心を優先して学習テーマを決定しました。これは一方的な研修提供ではなく、本人のやる気や目的に応じて学ぶ内容を設計するアプローチです。
次に、経営者自らが外部研修や学習の場に同行し、従業員と一緒に学びながら振り返りやディスカッションを行う支援を実施しました。また、社内だけでなく社外研修や体験機会(業務見学や取引先との交流)も積極的に活用することで、学習の幅を広げています。さらに、厚生労働省の助成金(キャリアアップ助成金等)を活用し、3か月の移行期間を設けて計画的に学び直しを実施しながら職種転換・正社員登用の支援も行いました。
<その結果どのような成果が得られたのか>
上記の取り組みにより、従業員が自分の仕事に誇りを持ち、主体的に事業転換や事業拡大にかかわる姿勢が育まれました。配置転換を伴う職務変更においても、従業員が自ら成長意欲を持って新しい役割に取り組むようになり、正社員登用や新事業領域での活躍につながっています。
さらに、コロナ禍における業態転換(中食サービス強化等)の提案も、従業員からの自主的な発案によって生まれ、組織全体の適応力向上に寄与しました。このように、学びの機会を経営と結びつけ、従業員との対話を重ねながら進めた取り組みが、従業員の主体性向上や組織としての柔軟な事業対応力の強化につながっていると報告されています。
▼参考:厚生労働省 職場における学び・学び直し促進ガイドライン特設サイト
iKEYAKUホールディングス株式会社
<リスキリングが必要だった理由・導入背景>
iKEYAKUホールディングス株式会社は、調剤薬局事業、農業支援、介護事業など多岐にわたる事業を展開し、専門的な資格を持つ社員が多く在籍しています。
事業拡大に伴い、社員数が増え、世代や価値観の異なる多様な人材が共に働く中で、従来は専門知識・資格中心の研修が中心でしたが、中間管理職のマネジメント能力やコミュニケーション、部下育成といった能力の育成が追いつかない状況が生まれていました。人材育成は専門知識だけではなく、組織運営やリーダーシップを含めたリスキリング的な視点での強化が不可欠と判断されました。
<どのようなリスキリングを実施したのか>
同社は、従来の専門スキル研修に加えて、「管理職・中間管理職向けのリーダーシップ/コミュニケーション研修」を実施しました。これは単なる座学ではなく、外部講師を招いた研修を複数回実施し、実践的な演習や対話を含む形で展開されました。特に、管理職が自らの役割や組織の方向性を語れるようになること、部下の感情に配慮したコミュニケーション方法、価値観の異なるメンバーをリードしていく力の強化に重点を置いた内容です。
また、経営者・管理職自身が研修に参加し、人事側も含めた学びを共有する場づくりが行われました。こうした取り組みにより、単なる知識習得に留まらず、組織全体でリーダーシップやコミュニケーションの質を改善するアプローチが採られています。
<その結果どのような成果が得られたのか>
研修を通じて、管理職層が自らの役割について理解を深め、部下とのコミュニケーションや動機づけのスキルが向上したという手応えが得られています。社内においては、管理職の役割認識の共有基盤が整いつつあり、これまでバラバラだった評価や対応の基準を統一するきっかけになりました。
また、参加した人事担当者自身の学習意欲が高まり、人材育成・組織開発への関心が強化されるという副次的な効果も生まれています。これにより、管理職研修を単発施策で終わらせず、継続的に改善・実施し、階層別育成の仕組みづくりにつなげたいという方向性が示されています。
▼参考:美の国あきたネット 魅力的な職場づくりに取り組む企業を紹介します
富士通(Fujitsu)
<リスキリングが必要だった理由・導入背景>
富士通グループでは、デジタル技術の進展や顧客ニーズの高度化により、従来の専門スキルだけでは将来の事業戦略に対応しきれないという課題が顕在化していました。そこで、社員一人ひとりが自律的に学び、キャリアを主体的に形成できる環境づくりが重要だと位置づけられました。教育制度やキャリア支援を経営戦略の一部として整備し、変化に強い人材基盤を構築することを目的に、リスキリングが推進されています。
<どのようなリスキリングを実施したのか>
同社では、FUJITSU Career Ownership Programをはじめ、社員が自らキャリアを考え学び続ける仕組みを整備しています。LinkedIn Learningを全社的に導入し、自律的な学習を支援するとともに、社内ポスティングや社内副業制度を通じて、実務経験によるスキル転換を促進しています。
さらに、テクノロジー領域では特定分野における再教育プログラムを実施し、グループ会社である富士通ラーニングメディアが日本リスキリングコンソーシアムに参画するなど、社内外を含めたリスキリング体制を構築しています。
<その結果どのような成果が得られたのか>
これらの取り組みにより、社員の主体的な学習やキャリア形成が定着しつつあります。社内異動や新領域への挑戦が活発化し、人材の流動性と組織の柔軟性が高まりました。加えて、特定分野におけるリスキリングによって早期戦力化が進み、顧客価値創出や戦略的プロジェクトへの対応力強化につながっています。
▼参考:富士通 Career & Growth Well-being
▼参考:富士通ラーニングメディア 「日本リスキリングコンソーシアム」に参画
キヤノン(Canon)
<リスキリングが必要だった理由・導入背景>
キヤノンでは、事業の高度化やデジタル技術の進展により、従来の専門分野に加えてソフトウェアやIT、DX領域の知見を備えた人材の重要性が高まっていました。特に、製品やサービスの競争力を維持・強化するためには、技術者一人ひとりが継続的にスキルを更新できる体制が必要とされていました。
こうした背景から、社内で体系的に学び直しができる人材育成基盤の整備が進められました。
<どのようなリスキリングを実施したのか>
同社は、ソフトウェア技術者の育成を目的とした独自の教育機関 Canon Institute of Software Technology(CIST) を設立しています。CISTでは、ソフトウェア開発やIT、デジタル技術に関する体系的な教育プログラムを提供し、基礎から応用まで段階的に学べる仕組みを整えています。加えて、職種やキャリア段階に応じた研修を組み合わせることで、実務と連動したスキル習得を支援しています。
これにより、社内での専門性深化と分野横断的なスキル獲得の両立を図っています。
<その結果どのような成果が得られたのか>
こうした取り組みにより、キヤノンではIT・ソフトウェア分野に強みを持つ人材の計画的な育成が可能になっています。技術者が継続的に学び直しを行える環境が整備されたことで、事業変化に対応できる人材基盤の強化につながっています。また、社内教育機関を軸とした育成体制により、外部採用に過度に依存せず、必要なスキルを内製で育てる仕組みが構築されています。
▼参考:キヤノングローバル 人材育成と成長支援 取り組み
TAISEI(大成建設)
<リスキリングが必要だった理由・導入背景>
大成建設は、建設業界全体でデジタル技術の活用が進むなか、設計・施工・維持管理といった各フェーズにおいてDX対応力が不可欠となっていました。
中期経営計画にDX推進が位置付けられたことを受け、全社員がデジタルスキルを身につけ、日常の業務で活用していく体制をつくる必要が高まっていました。特に建設現場の生産性向上や新価値創出には、職種や役職を問わずデジタルに強い人材基盤の強化が重要とされ、リスキリング的な取り組みの必要性が明確になっています。
<どのようなリスキリングを実施したのか>
大成建設は、全社員を対象としたデジタルトレーニングプログラム 「DXアカデミー」 を立ち上げ、体系的なスキル育成を推進しています。プログラムは「デジタルリテラシー獲得」「デジタル積極活用」「DX推進」の3段階で構成され、DSS(デジタルスキル標準)に基づくeラーニング、対面研修、実習形式の講座を組み合わせています。受講進捗は修了証やバッジ制度で可視化され、学習意欲の維持につなげています。
また、BIM/CIMや建設生産DX技術など、建設業務に直結したデジタル教育も体系的に提供し、現場の実務レベルで使えるスキル習得を支援しています。
<その結果どのような成果が得られたのか>
こうした取り組みによって、大成建設ではデジタル人材の裾野が着実に広がりつつあります。全社員が共通のデジタル基盤を学ぶ機会を持つことで、デジタルを共通言語として各部門が連携する文化が醸成され、現場の業務改善や効率化につながる基礎が整いつつあります。
加えて、eラーニングと実務教育の組み合わせによって、現場担当者のデジタルリテラシー向上と実務適用力の底上げが進展しています。これは、DX推進を担う人材育成と企業競争力の強化に寄与していると評価されています。
▼参考:大成建設サステナビリティ 人財育成|人財|社会
▼参考:大成建設株式会社 「DXアカデミア」
ベネッセホールディングス
<リスキリングが必要だった理由・導入背景>
ベネッセホールディングスでは、教育・介護・子育て支援など多様な事業を展開する中で、デジタル技術やITスキルの活用が経営戦略と現場の価値提供にとって不可欠になっています。
そこで、社員一人ひとりが主体的に学び続けられる「学習文化」を醸成し、DX・デジタルリテラシーを強化することが重要な経営課題として位置づけられています。これを通じて、社員の成長と企業の競争力強化を両立させることを目指しています。
<どのようなリスキリングを実施したのか>
同社は既存社員のリスキルに力を入れ、Udemy Business(オンライン動画学習サービス)を全社に導入し、自由に利用できる環境を整備しています。社員は21万以上の多様な講座から自らのニーズに応じて学習し、IT・デジタル知識の習得機会を持つことができます。
また、ITパスポートレベルのアセスメントを実施して現状のスキルを可視化し、結果に基づいて最適な講座を推奨する仕組みも設けています。さらに、OJTや社内ケーススタディを組み合わせた研修や、目標管理と学習を統合した制度により、実務と学習を一体化したスキル強化を促しています。これらの施策により、2024年度の研修プログラム参加者は延べ4,663人にのぼっています。
<その結果どのような成果が得られたのか>
Udemy Businessを通じた学習環境の整備と、個人の学習計画に応じたコンテンツ推奨の仕組みは、従業員が自ら変革に向かう動機づけにつながっています。また、目標管理と学習の統合は、個々のキャリア形成と組織のDX推進を結びつける役割を果たし、人材育成を企業全体の競争力強化につなげています。
こうした取り組みは、学習文化の醸成だけでなく、実務レベルでのデジタル対応力の強化にも寄与しています。
▼参考:株式会社ベネッセホールディングス 人材育成 | 社会 | サステナビリティ
HENNGE(ヘンゲ)
<リスキリングが必要だった理由・導入背景>
HENNGEでは、グローバル市場での事業拡大を見据え、英語での業務遂行力と高度なデジタルスキルを併せ持つ人材の育成が重要課題となっていました。特にエンジニアやビジネス職において、英語力が業務の幅を左右する場面が増えていたことが背景にあります。
そこで、語学と専門スキルを切り分けず、掛け合わせて伸ばす育成方針が打ち出されました。
<どのようなリスキリングを実施したのか>
同社は、社員向けに英語学習支援制度を整備し、業務時間内での学習やオンライン英会話の活用を含む教育プログラムを提供しています。単なる語学研修ではなく、英語を使った業務実践を前提とした設計が特徴です。これにより、英語力とデジタル・ITスキルを同時に高めるリスキリングを推進しています。
<その結果どのような成果が得られたのか>
英語学習支援を通じて、社員のグローバル業務への対応力が向上しています。英語とデジタルスキルの掛け合わせにより、海外顧客やグローバルチームとの協働が進み、事業成長を支える人材基盤の強化につながっています。社員の学習意欲やキャリアの選択肢拡大にも寄与しています。
▼参考:HENNGE 学習支援や各種手当でリスキリングを促進
リスキリングを導入するメリット

さまざまな企業でリスキリングが導入されているなか、ここでは具体的にどのようなメリットがあるのか解説します。
DX・事業変化に対応できる組織へ転換できる
リスキリングによって、デジタル技術の進展や市場環境の変化に対応できる人材が社内に増えることで、企業全体の変化対応力が高まります。業務効率化やデータ活用、新規事業の検討などを内製で進めやすくなり、競争力の強化にもつながるでしょう。
外部採用に依存せず、自社に必要なスキルを組織内で蓄積できる点も大きなメリットです。
既存社員の成長とキャリア自律を促し、離職防止につながる
リスキリングを通して新しいスキルを身につけることで、社員のキャリアの選択肢が広がり、自身の将来像を描きやすくなります。
学び直しを通じて自己成長を実感できる環境は、エンゲージメント向上や定着率の改善にも寄与します。特に役割の変化に不安を抱えやすいミドル層にとって、リスキリングはモチベーション維持に効果的でしょう。
採用・育成コストの最適化ができる
DX人材やデータ系人材など、採用難易度の高いスキル領域では、外部採用に多くのコストと時間がかかります。リスキリングで既存社員を育成することで、採用コストや立ち上がりまでのリードタイムを抑えることが可能です。必要なスキルを社内で再構築できれば、外注や採用への過度な依存も減らせるでしょう。
リスキリングの導入を検討した方がよい企業の特徴

企業規模を問わず、事業環境や組織課題によっては、リスキリングを早期に検討すべきケースがあります。特に、DX推進を掲げているものの人材スキルが追いついていない企業や、業務プロセスが属人化し、効率化や自動化が進まない企業では、その必要性が顕在化しやすい傾向があります。
また、採用市場で必要なスキル人材を確保できず、内製化を模索している企業や、新規事業の立ち上げ、既存事業の転換を予定している企業にとっても、リスキリングは有効な選択肢となります。外部採用に頼るだけではスピードやコスト面で限界があり、既存社員のスキル転換が競争力を左右するでしょう。
加えて、ミドル層のキャリア停滞によるモチベーション低下や、若手から中堅にかけての育成体系が弱く、社内スキルが分断されている企業では、人材の活用余地が十分に引き出せていない可能性があります。こうした課題を抱える企業ほど、リスキリングを通じて人材配置やキャリアの再設計を行うことで、組織全体の活性化につなげやすくなります。特にIT、製造、金融、サービス業では、そのニーズが一層高まっています。
リスキリングの導入手段

リスキリングの導入は、学習と実務、制度を分断せずに設計することで、スキルの定着と実務活用につながりやすくなります。
代表的な手段としては、UdemyやAidemy、Schooなどを活用したオンライン学習があり、時間や場所に縛られず基礎知識を習得できる点が強みです。あわせて、社内アカデミーや自社研修プログラムを構築することで、自社事業に直結したスキルや考え方を体系的に学ばせることもできます。
さらに、OJTと組み合わせて実務ベースでスキルを身につけさせることで、学習内容を現場で活かしやすくなるでしょう。
加えて、リスキリング関連の助成金や公的制度を活用すれば、コスト負担を抑えながら継続的な育成が可能です。ジョブローテーションや部署横断プロジェクトへの参加、社外講座や資格取得支援などを組み合わせることで、知識習得にとどまらず、役割転換や視野拡大まで含めたリスキリングを実現できるでしょう。重要なのは、単発施策に終わらせず、学習後の配置や役割と一体で設計することです。
リスキリングの進め方

最後に、リスキリングの進め方を実践レベルで丁寧に解説します。
事業戦略と必要スキルの棚卸し
リスキリングを進めるための初めのステップは、中期経営計画やDX戦略、新規事業方針を確認し、今後強化する事業領域と業務内容を整理することです。
次に、それぞれの業務に必要なスキルを洗い出し、職種別・業務別に一覧化します。現状の社員スキルと照らし合わせることで、どのスキルが不足しているのかが明確になるでしょう。この工程を丁寧に行うことで、育成テーマの優先順位を誤らずに済みます。
対象社員の特定とレベル診断
リスキリングを全社で行うのか、特定部署や職種に限定するのかを決め、対象社員を具体的に選定しましょう。スキルチェックシートや簡易テスト、上長評価を組み合わせて、現在のスキルレベルを可視化します。
あらかじめレベル差を把握しておくことで、研修内容が難しすぎたり簡単すぎたりする事態を防げます。結果として、個々の理解度に合った育成設計が可能になります。
学習テーマと育成方法の決定
職種別・業務別の必要なスキルや社員のスキルレベルの棚卸し結果をもとに、デジタル基礎、データ分析、AI活用など、育成すべきテーマを具体化します。
オンライン学習や外部研修で基礎知識をインプットし、並行して業務改善プロジェクトやOJTを組み込みましょう。学んだ内容を実務で使う機会を設けることで、スキルの定着率が高まります。研修と業務が分断されない設計が、成果を左右します。
ロードマップ作成と予算計画
リスキリングは短期施策ではないため、最低でも半年から1年程度のスパンで計画を立てます。学習開始から実務適用、役割変更までの流れを段階的に整理し、各フェーズの到達目標を設定します。
あわせて、研修費用や人件費、助成金活用の可否を含めた予算を見積もりましょう。計画とコストを事前に可視化することで、社内合意を得やすくなります。
学習効果の測定と配置転換
効果測定は受講完了率だけでなく、業務での活用度や成果物の有無で評価します。
例えば、業務改善提案の提出数や、新ツールを活用した実務対応の有無など、行動指標を設定します。スキル習得後にどの業務や役割を任せるのかを明確にし、配置転換や職務変更につなげましょう。ここまで設計することで、リスキリングが組織成果に直結します。
まとめ
リスキリングは、研修施策にとどまらず、事業戦略と連動した人材戦略として重要性を増しています。
本記事の事例でも、DX推進や事業変革に対し、外部採用だけでなく既存社員の学び直しによって対応する企業が共通して見られました。
成果を上げている企業は、学習提供だけで終わらせず、キャリア設計や実務・配置と結びつけて設計しています。自社の課題を踏まえ、必要なスキルを明確にしたうえで育成を進めることが、人事・採用担当者に求められています。